【雑記】Tacticool(タクティクール)って、何だろう?

 最近、銃界隈、特に英語圏のライトユーザー層でちょくちょく耳にするワードがある。
それが「Tacticool(タクティクール)」である。

 もちろんそんな単語は存在しない。 Tactical と Cool を合わせた造語である。

戦術的で、カッコいい。
 読んで字の如くの意味を持つ言葉だが、最近この言葉の意味が変な方向に行ってるのではないかと思うことがあるので、雑記程度につらつらと書いてみることにする。

 

 

・――――そもそもTacticoolってどういうものだよ?

 

 当然の疑問である。
 言葉としては2010年代前後には普及し始めていた印象がある。
 だがこの言葉が広く用いられるようになったのは2014年の映画「ジョン・ウィック(以降JW)」と、2019年のFPSゲームCall of Duty : Modern Warfare(以降COD:MW)」が主な理由だと思われる。
 これらの作品は近年の主だったメディア作品において最も戦術的で、クールな動作を行う作品だった。
 「JW」であればC.A.R システム、「COD:MW」であれば使用中の弾倉は保持、使い切った弾倉は捨てるリロードモーションやプレスチェック、そのほか様々な現代的で現実的な所作を視聴者とプレイヤーにこれでもかというほど見せつけた。
 それこそ神格化されるような、まさにターニングポイントと呼べる代物だった。
ある程度の戦術性があり、それでいて見た目にもカッコいい。
それがおそらく本来の意味でのTacticoolだろう。

 

 

・じゃあお前の言う「今のTacticool」ってのは何なんだ?

 

 筆者が思うに、今のTacticoolは、TacticalでもCoolでもない、単なる曲芸になりつつある。
 本来「戦術的な所作」と「見た目に全振りした所作」は別物のはずである。
 元来、現代の特殊部隊が行う動作と、曲芸師が行うガンスピンは混じりあうことは決してないはずである。
特殊部隊の戦術的な所作は見世物としての価値はなく、曲芸師のガンスピンやジャグリングに戦術性はない。

 筆者の中では前者を「タクティカル」、後者を「スタイル」と呼んでいる。

 西部劇やターミネーターでガンスピンやスピンコッキングがスタイルの技としてカッコいい、Coolだと思われた。

 一方では戦術的(Tactical)な所作にカッコよさ(Cool)を見出した。

 ところがいつの間にか「タクティカル」に「スタイルのクール」を混ぜ合わせたものがTacticoolである、と言われるようになってしまっている。

 それが筆者の思う「今のTacticool」である。

 

 

・はっきり言うと、俺は「今のTacticool」が嫌いだ。

 

 

そう、嫌いだ。

 今のTacticoolはスタイルの要素を多分に含んだ結果、単なる曲芸に成り下がった。
どこにも戦術性はなく、ただただ腕や身体を見せつけるように動かし、10年前のFPSみたいな速度でセミオートの拳銃やライフルを連射している。

 それなのに語源の部分だけは引き継がれて「タクティカルでクールだ」ともてはやされている。
 個人的に大嫌いな「今のTacticool」を例に話してみようと思う。

 

youtube.com

Good to go 🤌😂

 

 上記の動画で行われているのは、「Air Racking」とも呼ばれる筆者が最も嫌うTacticoolな動作だ。
 弾倉を挿入し、派手に腕を前後させて初弾を装填している。

確かにCoolかもしれない。

 だがこれのどこが「戦術的」なのだろうか?

腕を大きく動かす利点は? ない、疲れるだけ。
左手を使わない利点は? ない、左手でスライドを引くほうが確実で疲れない。
そもそもこの動作のためだけに弱いリコイルスプリングに交換している?
この動作のためだけに?
スライドの耐久性や確実な作動性を犠牲にしてまで?

これのどこがタクティカルなのだろうか。

 

これらはTacticoolではなく、Coolに分類されるべき技だろう。

だが何故か今日においてこれらの技がTacticoolとして浸透している。

 

 

・スピンコック

 

 この話をすると出てくる話題がある。

 それがレバーアクションにおけるスピンコックだ。 レバーに指を入れたまま銃を落とし、銃の重さでレバーを稼働させる。

 上記のAir Rackingと同様にスタイルに寄った装填テクニックだ。

 これはもともと西部開拓時代などに馬に騎乗しながら撃ち合う際に片手でレバーアクションライフルを撃つ際に用いられたテクニックが元になっている。(尤も、この技術が広まったのは西部劇が流行ってからだが)

 

 つまり、用途は非常に限定的ではあるが戦術製、或いは実用性に則った技であり、また今日においてもスタイルの技として確立されている。

 

Tacticool扱いはされていない。

だが時と場合においてはTacticoolの条件を満たしうる技だ。

 

 個人的な感情をむき出しにして言うなら、これこそがあるべき「戦術的でスタイルのCoolを取り入れた」Tacticoolであろう。

 

 

・メディア作品における「今のTacticool」

 

 メディア作品おいて、今のTacticoolは時折目にすることがある。

 最近であればCOD:MWIIにアップデートで追加された武器の「9mm Daemon(Staccato P)」は、非常に今のTacticoolを取り入れたモーションになっている。

 

youtu.be

Every 9mm Daemon reload and inspect animation

 

 だが、筆者はむしろこのモーションが好きだ。

 スタイルの技を多く取り入れ、むしろ無理やりタクティカルな部分と混ぜ込まないようにしている。

 ただ、それでもゲーム内の雰囲気や世界観を崩さない程度には現実的なモーションに仕上がっている。

──薬室内の弾を飛ばしてスライドでキャッチするのは「現実的」なのか?

と聞かれるとさすがに答えに詰まってしまうが、そもそもこれはゲームだ。

 このくらいのケレン味があった方がエンターテインメント的だ。

 

 だが「これを現実でやるか?」と聞かれれば答えはNOだ。

ゲームと現実は違う。

戦術的な部分で言えばこの動作をやる価値は一切ない。

 

 

 

・さいごに

 

何を是とするかは個々人の感性による部分が大きい。

なのでTacticoolの「cool」に相当しうるかの部分に関しては筆者が定義することは不可能だ。

しかし、Tacticalの部分は少なくとも一定の定義が可能であるはず。

何をもってしてTacticalであるかを考え、またスタイルの技を知ることで、Tacticoolは正しい意味で使うことができるのではないだろうか、と思う。